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Interview with Mizukoshi Tomo

地球上の音楽|出演者インタビュー|水越朋

 

取材・構成:藤倉めぐみ

●虫の知らせから

 

――まず、今回、出演することになった経緯を聞いてもいいですか?

 

水越「細谷さんと、前回というか、去年の夏に志村知晴ちゃんの映像作品(『留守。日の入る水槽に魚』2013年/監督:志村知晴[ピグマリオン効果])で共演したんですけど、そうですね、それまでは全然、私も知らず」

 

――志村さんの作品に出る経緯って、どんな感じだったんですか?

 

水越「ああ、あれは……そう、知晴ちゃんと会ったのも、それが初めてだったんです」

 

――あ、そうなんですか?

 

水越「そうなんですよ。その前に知晴ちゃんが見てくれてて、わたしの……何を見たんだったけなあ」

 

――Baobab?

 

水越「Baobabじゃなくって、あ、そうだ。音楽の人との即興セッションみたいなのを見てくれて、その後にロロを、私、それがお芝居初めてだったんですけど、それも見てくれて、それで興味もってくれて連絡が来て、っていうので……そうなんですよ、そのまま。なんか全然知らなかったから、すごいびびって、1回断ったりもしちゃって(笑)。『どうしても出てほしい』って言われて、『じゃ、じゃあ出ます』っていうことになって。そう、それで細谷さんとも」

 

――その時の撮影はどんな感じでしたか?

 

水越「なんか面白かったですね。細谷さんも私も、なんていうか、超マイペースみたいな感じでやってましたけど、スタッフ陣がすごいテキパキ動いてた感じがしましたね。小学生の話だったんですけど、2人で、ちょっとこう、ラブな感じで、恋がうまれた、の? みたいな感じの相手役でした」

 

――実際、今回の出演について細谷から声をかけたときってどう思いました?

 

水越「すごい個人的なことなんですけど、ふと細谷さんのことを思い出して、細谷さん何してるんだろうなあって思ってるときに連絡が来て」

 

――え? ええ! すごい。

 

水越「そうなんですよ。あ、じゃあ、出ろってことかなって思って」

 

――虫の知らせみたいな。

 

水越「そうそう、なんかあったんですよ、そういうのが。そうですね、それで細谷さんからも、前回作品をやった事とか、どういう作り方してるとか、そういった話も、知晴ちゃんの撮影の時に聞いてて、難しそうだけど面白そうですねって話してたので、ちょっと興味もあり。じゃあ……受けてみようかなって」

 

 

●声が出る身体の強さ

 

――前に水越さんからちょっと聞いたんですけど、演劇を避けてたって話をしてましたよね?

 

水越「学生の頃は一応、演劇専修ってところにいたんですけど」

 

――え、演劇専修なんですか。

 

水越「演劇専修なんですよ。演劇専修なんですけど……」

 

――でも全然演劇やってなかったんですよね。

 

水越「そうなんですよ。桜美林大学は色々学べるとこで、演劇のこともスタッフのこともダンスのことも……私は、ダンスをやってましたね、主に、大学では」

 

――桜美林には、ダンスをやるつもりで入ったんですか?

 

水越「桜美林に入ったとき、私、一番最初はスタッフやりたくて入ったんですよ。そうそう。スタッフ、やろうかなって思って」

 

――照明とか?

 

水越「何をっていうのは、ちょっとよく分かってなかったんですけど、舞台を支えることがしたいなって思って、入ったんですけど、結局ダンスに……気付いたらダンスやってたって感じですね」

 

――元々、ずっとダンスをやってたんですよね。

 

水越「そうですね。ダンスを、ちゃんと始めたのは高校生だったんですけど、わりとずっと身体を動かすことをやっていて。でも、もうダンスは高校でいいかなって思って。大学では裏方のことをやろうと思って行ったんですけど、結局ダンスへって感じです。でも、芝居はすごい避けてましたね」

 

――何が嫌だったんですか?

 

水越「苦手意識があったのは……高校時代に、研究発表みたいな場で、ちっちゃい芝居をやったんですけど……セリフが完全に抜けて、舞台でこう、仁王立ちするっていう……」

 

――じゃあセリフっていうものに苦手意識があったんですか?

 

水越「そうそう、そうなんですよ。だからそれでもう、芝居やだって思って。その時点で結構、お芝居が……見るのは好きだったんですけど、私は、芝居は、やらないだろうなって思ってて。お芝居は、授業も避けて、声かけられても避けてって来てしまったんですけど、でも卒業してからちょっと興味が沸き……って感じですね。今、ダンスで関わらせてもらってる先生(笠井叡さん)の稽古で、発声呼吸とか発声力を使って踊ることに触れて、そこで、声を出す、声が出る身体って、すごく強いなあと思って」

 

――分かります。わたしはダンサーの言葉の強さに興味があるので、すごく分かります。

 

水越「そう、そうなんですよ。そう、何だろうこれはって思って。声を出す……ともかく、最初はすごく声を出すってことに興味が出てきて、声を出すことに意識的になってた時に、そうですね、そこからちょっとお芝居のほうに……」

 

――じゃあ、そういうタイミングで、ロロから声がかかった感じですか?

 

水越「そうですね。そういうことを色々考えてるときにたまたまロロで声かけてくれて……悩んだんですけど、じゃあ、ちょっとやってみるかって思って」

 

――私はロロの『ミーツ』(2013年/脚本・演出:三浦直之)を見ていて、水越さんはすごく声のいい人だなっていうのを思ってたんですよ。

 

水越「つたない……私のつたない芝居ですいません」

 

――いや、あの、すごい上手ですよ。ちょっと、ないぐらい上手ですよ。最初、細谷からキャストの候補に水越さんって聞いたときに、多分全然大丈夫だなっていうのがあって。自分のすごく勝手な思い込みですけど、ダンサーは大丈夫説があって。

 

水越「あはは(笑)」

 

――『ダンサーは大丈夫』って。それ以外にもロロを見た時の事を思い出して、多分平気だなあって思ってたんですよ。

 

水越「でも、細谷さんの言ってることは分かるというか、結構、身体のこと……なんだろう、身体のことを直接言われるわけじゃないんですけど、すごく、イメージがしやすいです」

 

――細谷が言っていたのは、こういうイメージって伝えて、出来るようになるまでの時間が、水越さん早いんですよねって。こういう感じって言ったら、出来ちゃうんですよね、すごいですねっていうのを言ってて。

 

水越「……出来てるかは分からないんだけど、こういうことかな? って思って、取り組みやすいっていうか。だから結構やってても面白くって。ああ、なるほどなって思うことがいっぱいありますね」

 

 

●踊ってないよというのも、ちょっと違う

 

――稽古を見ていると、水越さんは踊らなくても踊ろうとしているというか、動かなくてもちゃんと存在しようとしてるってことを、すごく思います。ロロに出て、志村さんの作品に出て、今回の稽古をして、と続いてますけど、演じると、踊るって違いはあります?

 

水越「そう、ですね……今、芝居やってるんだってダンスの子とかに言うと『本当? 全然踊らないの?』って聞かれるんですけど、答えづらくって。踊ってはいない、と、思ってるんですけど、でも本当に踊ってないよっていうのも、ちょっと違うような」

 

――そういう気がします。

 

水越「そうなんですよね。でも、踊ってはいないのかな、っていう風にも思うんですよ。今回は特に、そうですね……踊ってないけど、考えてることは、すごく……ダンスというか、私が今まで考えてきていることと離れてないというか、わりと地続きで考えているような気がしているので、どうも、答えづらいというか、他の人になんか、うまく説明できないでいるんですけど」

 

――実際、稽古をやってみて、どうですか

 

水越「そうですね。なんか楽しいです。楽しいのは、発見がとにかく多くって、今」

 

――例えば?

 

水越「例えば、『声を出して、何か単語を言ってから、あ、そうだ、と気付く』っていうことを細谷さんが言ってて、で、やってみたら自分がその……自分が言ったことに自分が反応するっていう、それがすごくびっくりして。自給自足している感じがあって。ダンスも、自分でイメージして、それを身体で受けてっていうのはいっぱいあるんですけど、自分が声に出したことに……声を出すのは自分の中からなのに、その音を外から取って、音に反応するっていう、それ……に驚いたんですよね、このあいだ。自分で言ったのに、自分で聞くことが出来るって言うのが、今だって普通にしゃべっているはずなんですけど、あれ、なんですかね、なんでだろう……」

 

――他ではあんまりない経験をしている感じですか?

 

水越「そうですね。そう。今までこんなことに気付かなかったというか、ともかくびっくりして、ああ、って思って」

 

――水越さんは、稽古をやってるときの方が印象が強く感じますね。今喋っているこの感じと差があるというか。そこはスイッチがあります?

 

水越「声のスイッチ……そうかもしれないですね。でも声を出すこと自体は慣れていないので必死。必死は必死なんですけど。あ、でも、声を出す……一回、細谷さんが、喉の筋肉でも考えるとか、ちょっとそういう細かい話もしたんです。セリフの抑揚って私よく分かってなくって、抑揚って波かな? ぐらいにしか思ってなかったんですけど……イメージを持つこと。一個のセリフの中でも、意識が、相手に引っ張られる部分と自分に戻す部分があるみたいな、そういう波があって、その辺を考えると、セリフにつながってくるなっていうか……喉の筋肉とかも、そこらへんも考えながらなんですけど……あ、なんかごめんなさい」

 

――いえ、今すごくいい話をしていると思います。

 

水越「そうですね、その……外側の形からじゃなくて……自分の内側からの色んな意識とかやり方とかを、今すごくじっくりやれている感じがしています」

 

――今、同時進行でソロの踊りも作っているじゃないですか。ICiT Dance Salon in RAFT ダンス 10 minutes 2014/7/19

 

水越「そうなんです」

 

――『地球上の音楽』での稽古と同時に作ることで、変わることってありますか?

 

水越「同時進行で作ってくから、すごく今やっていることに、影響されて、ますね。影響されてるっていうか……そういう頭で考えちゃう。結構、こっちで気付いたことを、『あ、これを使ってここら辺をもうちょっとやってみたい。やっていけたらいいな』ってことを考えてますね」

 

――お芝居も続いて、芝居の苦手意識みたいなものは取れてますか?

 

水越「どうなんですかね、細谷さんの……今の稽古は、面白くやれてますけど。細谷さん自身、ダンスも見てるし、ダンスのワークショップも受けてるし、ダンスへの興味、ダンスに対しての知識というか、意識があるから、私もすごくやりやすいですけど」

 

――他でってなると?

 

水越「そうですねー(笑)……役者さんに囲まれたら……えっと、私、大丈夫かなって。どこでもやっていける自信は、今まったくないですね」

 

――じゃあ、これから女優もっていう感じ……?

 

水越「ではない(笑)。やっぱり『女優ですか?』って聞かれたら、『いえダンサーです』って、はっきり答えられるようなスタンスではいて。そうですね……女優ってなんですかね……女優なのかどうか……」 

 

――でも、ダンスをやってる人って、その人なりに嘘をつくのが嫌いな人が多いと思います。身体には嘘をつきたくない。言葉、というか、頭だと嘘をついちゃう。芝居は、舞台上に乗せた時に嘘になるものをたくさん見てしまうから、ダンスをしていると言う人が多い気がします。

 

水越「そうですね、そこはひとつ違うところだなって思いますね。お芝居とダンスの」

 

――でもお芝居自体に対して苦手というか、嫌悪はないですか?

 

水越「そうですね。好きな演劇、嫌いな演劇はありますけど」

 

――どういうものが好きですか?

 

水越「……なんか、あの、やっぱりお芝居があってストーリーがあって、虚構になっていく部分があるけど、それでも嘘をつかない。嘘をつかないというか、虚構をやるっていう前提で、正直なことをやっているなっていうものが好きですね。虚構をしていることに関して、疑いが……あ、でも、どうだろうな、そういうことでもないのかな……」

 

――今回の作品は男女2人芝居ですけど、どうですか?

 

水越「ひっちー(笑)。ひっちーは……ひっちーは、いい子ですよ。面白い子です(笑)。いやあ、稽古が始まる前は、すごい不安だったんですけど……っていうのは、こんな歳の離れた子と、しかも2人で、ねえ、やるっていうのが。私もお芝居は、まだあまり経験がないですし、大丈夫、なのだろうか……って、すごい思ってたんですけど。しかも後輩ですし」

 

――そうですよね。

 

水越「そうなんですよ。『後輩だ!』と思って。去年か一昨年ぐらいまでかな? 大学の授業のアシスタントやったりとか、大学と関わることが多かったので、後輩っていうか生徒……生徒ってほどでもないんですけど、生徒と後輩の間みたいな感じで桜美林の学生とは接していたので、『はっ! ああ、18!』って……思ってたんですけど、やあ、面白いですね、ひっちーは。若いなあって思うこともいっぱいあるんですけど、わりと仲良くやらせてもらってます」

 

――いい相性だと思います。

 

水越「なんか、稽古場の雰囲気いいですよね。なんですかね……?」

 

――面白いです。わたし、ずっと笑ってます。

 

 

会話の難しさと面白さ

 

――では最後に、『地球上の音楽』で、どんなことに挑戦したいですか?

 

水越「そうですね、……やっぱ2人芝居なので……1人でしゃべることが多いのと……1人でしゃべる部分と2人で会話になる部分とあるんですけど……どっちも違う面白さがあって、どっちも出来るようになりたい」

 

――まだ出来ている感じしないですか?

 

水越「そうですね。まだ1人でやってる時のほうが、自分でずっと考えるから、あ、やばい長くなっちゃう」

 

――いや、話して大丈夫です。

 

水越「1人のほうがダンスと繋げやすいというか……自分の考えていたこととか、発見を、自分のリズムでやれるっていうのがあるんですけど、会話ってあの……ひっちーと2人でやるから、思いがけない方向に進んでいったりするのが、すごく面白い。面白くって難しいなあって思っていて、今」

 

――じゃあ、2人の会話というか、2人での言葉に挑戦したい……? あ、でも、1人の時でも2人の時でも、両方なんですかね?

 

水越「そうですね。今は、2人のほうが難しく感じていて。そしてセリフを覚えるのも大変なんですけど(笑)」

 

――良く覚えてますよ。大丈夫ですよ。

 

 

 

 

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